第5章 連続関数と平均値定理
「つながっている」だけで、こんなに言える
第1章で連続を「入力の小さな変化 → 出力の小さな変化」と定義しました。 一見あたりまえのこの性質から、驚くほど強い結論が出ます。
たとえば——気温は連続に変化します。朝 C、昼 C だったなら、 その間にちょうど C だった瞬間が必ずある。飛び越えることはできない。 これを数学にしたのが中間値の定理です。「つながっている」を認めるだけで、 「途中の値を必ず取る」「有界閉区間なら最大最小がある」といった存在が保証されます。
この章のテーマは存在定理。値を計算せずに「必ずある」と言える。 その燃料は、第2章で仕込んだ実数の連続性です。
中間値の定理
定理 中間値の定理
が閉区間 で連続で のとき、 と の間の任意の値 に対し、 となる が存在する。
証明の心は区間縮小法(第2章)。 より下にある区間半分を選び続けると、 「下と上の境目」の一点に挟まる。連続性より、その点の値がちょうど になる。 応用として、奇数次の実係数多項式は必ず実根をもつ( で符号が逆だから途中で を通る)。
最大値・最小値の定理
定理 最大値・最小値の定理(ワイエルシュトラス)
が有界閉区間 で連続なら、 は最大値と最小値をとる。
「有界閉区間」という条件が命です。開区間 で は上限 に達しないし、 は上に非有界。端を含む・区間が有限でないと最大最小は保証されません。 証明は「値域が上に有界であること」+ボルツァーノ–ワイエルシュトラスで到達点をつかまえる。
一様連続とハイネの定理
連続は「各点ごとに をとる」定義でした。点によって必要な が変わってよい。 ところが「区間全体で共通の 」がとれると、話がぐっと強くなります。
定義 一様連続
を満たすとき、 は一様連続という。
普通の連続との違いは の置き場所。連続は「点 を決めてから 」、 一様連続は「先に を決めれば全点で通用」。 は で連続だが一様連続でない ( に近いほど急で、共通の がとれない)。ところが——
定理 ハイネの定理
有界閉区間で連続な関数は、そこで一様連続である。
「有界閉区間ではコンパクト性が効いて、各点の たちの中から共通の一つがとれる」。 この定理は第7章でリーマン積分の存在を示すときに、静かに、しかし決定的に効きます。
微分の主役:平均値定理
ここから微分。まず特別な場合から。
定理 ロルの定理
が で連続・ で微分可能・ なら、 となる が存在する。
「両端が同じ高さなら、途中に山か谷(傾き )がある」。最大最小の定理で内部に極値点があり、 そこでは微分が ——という筋です。これを傾ければ一般の平均値定理になります。
定理 平均値の定理
が で連続・ で微分可能なら、
左辺は「平均の傾き(両端を結ぶ直線)」、右辺は「どこかの瞬間の傾き」。 平均の速さは、途中のどこかで実際の速さと一致する。旅行で平均時速 km なら、 どこかで瞬間時速もちょうど km だった、というあれです。
平均値定理は「 の情報から の情報を引き出す」変換器です。ここから 「 なら増加」「 なら定数」といった、微分の直感的な事実がすべて証明されます。 高校で天下り的に使っていた事実の根拠が、ここにあります。
定理 コーシーの平均値定理
が上の条件を満たし のとき、 となる がある。
とすれば普通の平均値定理。2つの関数の変化を「比」で結ぶこの形が、次のロピタルを生みます。
ロピタルの定理
定理 ロピタルの定理
で または の不定形になるとき、適当な条件下で
の場合、 とみてコーシーの平均値定理を使うと ( は と の間)となり、 で右辺が極限に寄る。 **「比の極限を、微分係数の比に置き換える」**というカラクリで、コーシー平均値定理の直接の応用です。
注意 つまずきポイント
- ロピタルは不定形にしか使えない。 のような確定値に適用すると誤答する。
- 平均値定理の は存在するだけで、具体的な位置は分からない。「存在」を使う定理だと割り切る。
- 中間値・最大最小は連続だけで成り立つ。微分可能性は不要。条件を混同しない。
この章のまとめ
- 連続だけから中間値・最大最小という存在定理が出る。燃料は実数の連続性、条件は「有界閉区間」。
- 一様連続は を全区間で共通にとれる強い連続。有界閉区間の連続なら自動(ハイネ)。
- 平均値定理は「 から を読む」変換器。増減・ロピタルなど微分の常識はすべてここから証明される。
次章は、平均値定理を高次に一般化したテイラー展開——関数を多項式で近似します。