非可換環・リー環
「掛ける順番」が意味を持つと、世界はどうなるか
普通の数は 。でも行列は が普通です。量子力学の「位置と運動量は同時に 測れない」も、演算子の掛け算が非可換だから起こる。順序が効く世界——非可換環——は、 可換な世界とは別の構造論を必要とします。
その金字塔がアルティン–ウェダーバーンの定理。「良い性質(半単純)を持つ非可換環は、 必ず斜体上の行列環の直積に分解される」という、複雑な代数を単純部品へ完全分解する定理です。 一方、微分の“無限小版”として現れるのがリー環。連続的な対称性(リー群)を 線形化したもので、掛け算の代わりに「括弧積」を持ち、キリング形式やルート系という美しい 組み合わせ構造で分類されます。物理と幾何の最前線につながる代数です。
非可換な代数を単純部品に分解する(ウェダーバーン)。連続対称性を線形化する(リー環)。
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前半は「非可換環を単純部品へ分解する」、後半は「連続対称性を線形化して分類する」。二つの構造論を辿ります。
非可換環の構造論
- 非可換の世界へ — 行列・四元数・量子、単純環・斜体
- 加群と半単純性 — 既約加群・完全可約・シューアの補題
- 半単純環 — 自分自身が半単純加群・単純環の分解
- アルティン–ウェダーバーンの定理 — 半単純環 = 斜体上の行列環の直積
- ジャコブソン根基 — 半単純性の障害・根基 0 が半単純
- 群環とマシュケの定理 — 群環の半単純分解・表現論の再解釈
リー環論
- リー環とは — 括弧積・ヤコビ・リー群の線形化・随伴表現
- 可解・べき零リー環 — 導来列・エンゲルの定理・リーの定理
- 半単純リー環とキリング形式 — カルタンの判定法・ワイルの完全可約性
- カルタン部分環とルート系 — ルート分解・sl₂ の梯子
- ルート系とディンキン図形 — 単純ルート・カルタン行列・分類
- 分類と展望 — 半単純リー環の分類・最高ウェイト・量子群・総括
前提
環論・加群論(イデアル・加群・完全系列)と 表現論(既約表現・マシュケ・指標)が前提。後半は リー群 (指数写像・括弧積・古典群)と表裏一体、線形代数 の固有値・双線形形式を全編で使います。
準備ができたら 第1章:非可換の世界へ へ。