数理論理学・数学基礎論
数学が、自分自身を調べ始める
これまでの分野は「数学を使って」何かを調べてきました。数理論理学は、視線を反転させます。 「証明する」「正しい」「計算する」という営みそのものを、数学の対象として調べるのです。
すると、めまいのするような問いが立ち上がります。「正しいこと」は「証明できること」と一致するのか (→ゲーデルの完全性定理)。数学は自分の無矛盾性を自分で証明できるのか(→不完全性定理:できない)。 何が「計算可能」で、何が原理的に計算不能なのか(→停止性問題)。連続体仮説は真か偽か (→どちらでもない、証明も反証もできない)。数学の可能性と限界を、数学自身の手で描き出す—— 最も哲学的で、最もスリリングな分野です。
この分野は特に形式的証明に力点を置いています。健全性・完全性(ヘンキン構成)・カット除去・ 対角線補題・不完全性定理を、飛躍なく完全な証明として追います。証明木の可視化・真理値表の実演つき。
この分野の地図
構文と意味論を分離し、両者の一致(完全性)と限界(不完全性)へ登ります。順番に読むのがおすすめです。
記号論理学
- 命題論理 — 構文と意味 — 論理式・付値・トートロジー・ブール代数
- 証明体系 — ヒルベルト系と自然演繹 — 演繹定理・形式的証明木
- 健全性と完全性(命題論理) — 極大無矛盾集合・コンパクト性
- 一階述語論理 — 構文 — 量化子・自由変数・代入
- 意味論 — タルスキの真理定義 — 構造・充足・論理的帰結
- 一階の証明体系と健全性 — 量化子規則・固有変数条件
- ゲーデルの完全性定理 — ヘンキンの構成(完全証明)
- コンパクト性とレーヴェンハイム–スコーレム — 超準モデル・スコーレムのパラドックス
証明論
- シークエント計算とカット除去 — ゲンツェンの基本定理
- 非古典・高階の論理 — 直観主義・様相・高階・多値
計算可能性理論
- 計算可能性 — 計算モデル — チューリング機械・λ計算・チャーチ–チューリング
- 決定不能性 — 停止性問題・還元・チューリング次数
不完全性
- ゲーデルの不完全性定理 — 対角線補題・第一/第二定理(完全証明)・ゲンツェン
公理的集合論
- 公理的集合論 ZFC — 順序数・超限帰納法・基数
- 独立性 — L・強制法・巨大基数 — 連続体仮説の独立性
型理論・構成的数学
- 型理論・構成的数学 — カリー–ハワード・HoTT・逆数学
前提
集合と位相(濃度・選択公理・コンパクト性)の素養があると、随所で伏線が回収されて読みやすいです。 微分積分学の - に触れていれば、構文と意味論の分離が腑に落ちます。
準備ができたら 第1章:命題論理 へ。