環論
整数の「割り算・素因数分解」を、あらゆる世界へ
整数 には足し算と掛け算があり、素因数分解が一意にできます。多項式にも 足し算と掛け算があり、やはり「これ以上割れない多項式」への分解ができます。 この2つ、実はそっくりです。どちらも「足し算と掛け算をもつ集まり」——環だからです。
環論は、 で慣れ親しんだ「割り切れる」「素数」「余り」といった概念を、 もっと一般の世界で通用する形に鍛え直します。カギになるのがイデアルという部分集合で、 これは「 における『 の倍数全体』」の一般化。イデアルで割ることで剰余の世界を作り、 素因数分解が成り立つ環・崩れる環を見分けていきます。数論と代数幾何、両方の共通言語です。
この分野のゴール:素・極大イデアルで環を解剖し、一意分解がいつ成り立ち・いつ崩れるかを見極め、 多項式環のネーター性(有限個の方程式で図形が定義できる)まで到達すること。
この分野の地図
環とイデアルの基礎(1〜5章)→ 整域論と一意分解(6〜8章)→ 多項式環(9〜12章)と進みます。 順番に読むのがおすすめです。
環とイデアル
- 環とは何か — 公理・単元・零因子・整域・体( を体感)
- イデアルと剰余環 — 生成・和・積・共通部分
- 環準同型と同型定理 — 核はイデアル・第一〜第三同型定理
- 素イデアルと極大イデアル — 整域・体との対応・
- 中国剰余定理 — 互いに素なイデアルと直積分解
整域論
- 整除性 — 既約元と素元 — 一意分解の崩壊
- 整域の階層 ED ⊃ PID ⊃ UFD — 包含関係と反例
- 一意分解の証明(PID ⇒ UFD) — 昇鎖条件と既約=素
多項式環
- 多項式環とガウスの補題 — UFD 上の多項式環は UFD
- 既約性の判定 — 有理根・mod p・アイゼンシュタイン
- 対称式・終結式 — 根と係数・判別式
- ネーター環とヒルベルトの基底定理 — 有限生成性・代数幾何への扉
前提
群論(正規部分群・剰余群・同型定理)の考え方があると、イデアル・剰余環・同型定理が 「群論と平行」だと見えて滑らかです。集合と位相(ツォルンの補題)も随所で使います。
準備ができたら 第1章:環とは何か へ。