数学の作り方 How to make Mathematics

複素解析

「複素数で微分できる」だけで、なぜこんなに世界が変わるのか

実数の関数は、なめらかでも意外とわがままです。無限回微分できてもテイラー級数が元に戻らない (微積分で見た e1/x2e^{-1/x^2} の例)ような病的な現象が起こる。

ところが舞台を複素数に移し、「複素数として微分できる(正則)」というたった一つの条件を課すと、 状況が一変します。一度微分できれば自動的に何回でも微分でき、必ずべき級数に展開でき、 値は境界だけで決まってしまう。実解析での「例外」が、複素解析では「定理」になる—— この気持ちよさが、複素解析を数学で最も美しい分野の一つにしています。

この分野のゴール:コーシーの積分定理を心臓に据え、無限回微分可能性・留数計算・等角写像・ 解析接続という「複素だけの奇跡」を、可視化しながら手に入れること。

この分野の地図

正則関数(1〜3章)→ 複素積分(4〜5章)→ 級数と特異点(6〜7章)→ 留数(8〜10章)→ 写像論(11〜12章)と進みます。 順番に読むのがおすすめです。

正則関数

  1. 複素微分とコーシー–リーマン方程式 — 全方向からの極限
  2. 正則関数・調和関数・等角性 — 角度を保つ写像(可視化)
  3. べき級数と初等関数 — オイラーの公式・多価性

複素積分

  1. 複素積分とコーシーの積分定理 — グルサの三角形分割
  2. コーシーの積分公式 — リウヴィル・代数学の基本定理

級数と特異点

  1. テイラー展開と一致の定理 — 正則=解析的・剛性
  2. ローラン展開と特異点 — 除去可能・極・真性(位相ポートレート)

留数

  1. 留数定理 — たった一つの係数
  2. 実積分への応用 — 定積分を複素で解く
  3. 偏角の原理とルーシェの定理 — 零点を数える

写像論

  1. 最大値原理と等角写像 — シュワルツの補題・リーマンの写像定理
  2. 解析接続 — モノドロミー・鏡像の原理

前提

微分積分学(とくに級数・べき級数・線積分)と複素数の四則が分かれば読めます。 集合と位相(連結・コンパクト)も随所で使います。

準備ができたら 第1章:複素微分 からどうぞ。