数学の作り方 How to make Mathematics

加群論

ベクトル空間の「係数」を、体から環へ広げる

線形代数のベクトル空間は「体(R\mathbb RC\mathbb C)の上の」空間でした。スカラー倍の係数が 体だったからこそ、基底がとれ、次元が定まり、話が綺麗だった。では、係数を体でなく Z\mathbb Z など、割り算ができないかもしれない世界)にしたら何が起こるか?

これが加群です。ベクトル空間の一般化ですが、係数の割り算が効かないぶん、 基底が取れないこともあり、ずっと豊かで繊細になります。ご褒美は絶大で、 **「Z\mathbb Z 上の加群 = アーベル群」「K[x]K[x] 上の加群 = 線形変換のついたベクトル空間」**と、 別々に見えた対象が一つの理論に統一される。線形代数のジョルダン標準形も、有限アーベル群の分類も、 実は同じ「PID上の加群の構造定理」の二つの顔なのです。

加群 = 環の上のベクトル空間。線形代数と群論を一つの言葉にまとめ上げる。

この分野の地図

加群の基本 → 構造定理 → テンソルと完全性 → 加群の特殊類、と積み上げます。順番に読むのがおすすめです。

加群の基本 — 環の上のベクトル空間

  1. 加群とは — 体→環・アーベル群とK[x]加群の統一
  2. 部分加群・剰余加群・準同型定理 — 群論・環論と平行
  3. 直和・直積・自由加群 — 基底と普遍性
  4. 階数・ねじれ・表示行列 — 基底が取れない世界

構造定理 — 加群論の頂点

  1. スミス標準形 — 行列を対角化して単因子を読む(体感)
  2. 構造定理 — 単因子形・初等因子形・一意分解
  3. 二つの顔 — アーベル群とジョルダン標準形 — 二大定理の統一

テンソルと完全性 — 加群を掛け合わせる

  1. テンソル積 — 双線形を線形に・係数拡大
  2. 完全系列と完全性 — 分裂・蛇の補題・五項補題
  3. Homとテンソルの随伴 — カリー化・完全性の左右

加群の特殊類 — 導来関手へ

  1. 射影・入射・平坦加群 — 関手を完全にする加群
  2. Tor・Extと総まとめ — ねじれと拡大を測る

前提

群論(アーベル群)・環論(イデアル・PID・中国剰余定理)・線形代数学(ジョルダン標準形)が土台。 テンソルと完全性で 圏論(普遍性・随伴)を使います。深化は 可換環論・ホモロジー代数表現論 へ。

準備ができたら 第1章:加群とは から。