加群論
ベクトル空間の「係数」を、体から環へ広げる
線形代数のベクトル空間は「体( や )の上の」空間でした。スカラー倍の係数が 体だったからこそ、基底がとれ、次元が定まり、話が綺麗だった。では、係数を体でなく 環( など、割り算ができないかもしれない世界)にしたら何が起こるか?
これが加群です。ベクトル空間の一般化ですが、係数の割り算が効かないぶん、 基底が取れないこともあり、ずっと豊かで繊細になります。ご褒美は絶大で、 **「 上の加群 = アーベル群」「 上の加群 = 線形変換のついたベクトル空間」**と、 別々に見えた対象が一つの理論に統一される。線形代数のジョルダン標準形も、有限アーベル群の分類も、 実は同じ「PID上の加群の構造定理」の二つの顔なのです。
加群 = 環の上のベクトル空間。線形代数と群論を一つの言葉にまとめ上げる。
この分野の地図
加群の基本 → 構造定理 → テンソルと完全性 → 加群の特殊類、と積み上げます。順番に読むのがおすすめです。
加群の基本 — 環の上のベクトル空間
- 加群とは — 体→環・アーベル群とK[x]加群の統一
- 部分加群・剰余加群・準同型定理 — 群論・環論と平行
- 直和・直積・自由加群 — 基底と普遍性
- 階数・ねじれ・表示行列 — 基底が取れない世界
構造定理 — 加群論の頂点
- スミス標準形 — 行列を対角化して単因子を読む(体感)
- 構造定理 — 単因子形・初等因子形・一意分解
- 二つの顔 — アーベル群とジョルダン標準形 — 二大定理の統一
テンソルと完全性 — 加群を掛け合わせる
- テンソル積 — 双線形を線形に・係数拡大
- 完全系列と完全性 — 分裂・蛇の補題・五項補題
- Homとテンソルの随伴 — カリー化・完全性の左右
加群の特殊類 — 導来関手へ
- 射影・入射・平坦加群 — 関手を完全にする加群
- Tor・Extと総まとめ — ねじれと拡大を測る
前提
群論(アーベル群)・環論(イデアル・PID・中国剰余定理)・線形代数学(ジョルダン標準形)が土台。 テンソルと完全性で 圏論(普遍性・随伴)を使います。深化は 可換環論・ホモロジー代数・表現論 へ。
準備ができたら 第1章:加群とは から。