変分法
「最短」「最速」「最小エネルギー」を微分で解く
2点を最短で結ぶ線は直線。では、重力の下でビーズが最速で滑り降りる曲線は? 石けん膜が張る面積最小の曲面は? これらは「一つの数を最小にする 」ではなく、 「一つの関数(形)全体を最適にする」問題です。答えは関数、変数も関数——普通の微分では歯が立ちません。
変分法のアイデアは、微分の精神を関数の世界へ持ち込むこと。最適な形を少しだけ変形して (変分)、「どう変形しても値が良くならない=第一変分が 」という条件を書き下す。 すると求める形が満たすべき微分方程式(オイラー–ラグランジュ方程式)が出てきます。 物理の「最小作用の原理」も、幾何の「測地線」も、PDE のディリクレ原理も、 この一つの枠組みで語られます。
「関数を少し揺らして、値が動かない条件」を書く。すると最適な形の方程式が現れる。
この分野の地図
「第一変分で方程式を立てる」→「古典的問題を解く」→「力学と対称性」→「本当に最小か・存在するか」の順に進みます。
第一変分とオイラー–ラグランジュ
- 変分問題とは — 汎関数・なぜ普通の微分では解けないか・変分のアイデア
- オイラー–ラグランジュ方程式 — 第一変分 ・変分法の基本補題
- 第一積分と保存則 — 変数を含まない場合・ベルトラミの公式
古典的な問題
- 最速降下線と懸垂線 — ブラキストクロン(サイクロイド)・カテナリー
- 測地線・多変数・高階 — 複数の未知関数・高階微分・測地線方程式
- 拘束条件つき変分 — ラグランジュ乗数の変分版・等周問題
- 横断性条件と自由端 — 端点が自由なとき・自然境界条件
力学と対称性
- ハミルトンの原理とネーターの定理 — 最小作用・ルジャンドル変換・対称性と保存則
十分条件と直接法
- 第二変分と十分条件 — ・ルジャンドル条件・ヤコビ条件(共役点)
- 直接法I:存在の枠組み — ワイエルシュトラスの反例・下半連続性・強圧性
- 直接法II:トネリの定理と凸性 — 弱下半連続性 ⟺ 凸性・存在定理・正則性
- 変分法の広がり — ディリクレ原理との再会・極小曲面・モース理論・総括
前提
微分積分学(多変数・ラグランジュ乗数)と 微分方程式(オイラー–ラグランジュは ODE)が土台。第8章は リー群 の対称性、第9章は 微分位相幾何学 の モース理論、第10–12章は 関数解析・PDE(発展) と深く響き合います。
準備ができたら 第1章:変分問題とは へ。