数学の作り方 How to make Mathematics

リーマン幾何学

曲がった空間に「ものさし」を入れる

多様体は「なめらかな空間」でしたが、そこには長さや角度の概念がまだありません。 地図はあっても縮尺が無い状態です。そこに「各点で、接ベクトルの長さと角度を測る内積」= リーマン計量を入れると、はじめて距離・面積・最短経路が定義でき、本物の幾何が始まります。

計量が決まれば「まっすぐ進む(測地線)」の意味も定まる——曲面上では、それは大圏航路のような 最短経路です。そして計量の“曲がり”を測るのがリーマン曲率テンソル。この曲率が、 三角形の内角の和や、平行な2直線がやがて交わるかどうかを支配します。空間の曲がりが 運動を決める——アインシュタインの一般相対性理論は、まさにこのリーマン幾何学の言葉で書かれています。

多様体に内積(計量)を入れ、距離・測地線・曲率を定義する。一般相対論の数学的舞台。

この分野の地図

計量と接続 → 曲率 → 大域幾何、と積み上げます。順番に読むのがおすすめです。

計量と接続 — ものさしと微分

  1. リーマン計量 — 各点の内積・距離・体積
  2. レヴィ–チヴィタ接続 — 計量から一意に決まる微分
  3. 測地線 — 曲がった空間のまっすぐな道
  4. 指数写像と正規座標 — 一階まで平ら・ガウスの補題

曲率 — 曲がりを測る

  1. リーマン曲率テンソル — 微分の非可換性
  2. 断面曲率と定曲率空間 — 球面・ユークリッド・双曲(体感)
  3. リッチ曲率とスカラー曲率 — 体積の縮み
  4. ヤコビ場 — 曲率が測地線の広がりを支配(体感)

大域幾何 — 局所の曲率が大域の形を決める

  1. 完備性とホップ–リノウの定理 — 最短測地線の存在
  2. 比較定理I — ボンネ–マイヤー — 正曲率→有界・コンパクト
  3. 比較定理II — カルタン–アダマール — 非正曲率→ℝⁿ・体積比較
  4. 一般相対論への橋・まとめ — 重力=時空の曲がり

前提

多様体論(接空間・接続)・微分幾何学(曲面・ガウス曲率・測地線)・ 線形代数学(内積・二次形式)が土台。微分方程式(測地線・ヤコビ方程式)・ 変分法(長さの変分)も使います。応用は リー群複素幾何・ 一般相対論へ。

準備ができたら 第1章:リーマン計量 から。