測度論・ルベーグ積分
リーマン積分は、意外ともろい
第7章で作ったリーマン積分には弱点があります。いたるところ不連続な関数(有理数で ・無理数で )は 積分できないし、なにより「極限と積分の交換」がとても気難しい(一様収束が要る)。 関数の列を扱う現代解析では、これは致命的です。
原因は積分の作り方にありました。リーマンは定義域を縦に刻んだ。ルベーグは発想を変え、 値域を横に刻む——「値がだいたい になる の集まりは、どれくらいの『大きさ』か」を測る。 この一手のために、まず「集合の大きさ(測度)」そのものを厳密に作り直します。すると積分は はるかに丈夫になり、極限と積分がほとんど自由に入れ替わるようになります。
「関数を刻む」前に「集合を測る」。測度という土台の上に、新しい積分を建てます。
この分野の地図
「集合を測る」→「関数を積分する」→「積分を使いこなす」の三部構成で、順番に読むのがおすすめです。
測度の構成 — まず「大きさ」を作り直す
- なぜ積分を作り直すのか — リーマン積分の限界・値域を横に刻む発想(縦横の刻みを体感)
- σ-加法族と測度 — 測れる集合の家族・可算加法性・ボレル集合
- 外測度とカラテオドリの拡張 — 覆って測る→可測性→測度の自動生成
- ルベーグ測度と非可測集合 — 正則性・平行移動不変・ヴィタリ集合
可測関数と積分 — 丈夫な積分と、極限との交換
- 可測関数と単関数近似 — 値域を刻む階段近似
- ルベーグ積分の構成 — 単関数→非負→一般・リーマンとの一致
- 収束定理 — 極限と積分の交換 — 単調収束・ファトゥ・優収束(交換が破れる例を体感)
- 収束の諸相 — エゴロフとルジン — 各点・一様・測度・平均収束の地図
積分を使いこなす — 多重積分・関数空間・測度の微分
- 積測度とフビニ–トネリの定理 — 積分順序の交換はいつ許されるか
- Lᵖ空間と三大不等式 — ヘルダー・ミンコフスキー・イェンセン
- Lᵖ の完備性とヒルベルト空間 L² — リース–フィッシャー・内積
- 測度の微分 — ラドン–ニコディムとルベーグ分解 — 密度=測度の微分
前提
微分積分学(リーマン積分・極限)と 集合と位相(濃度・開閉集合・完備性)が下地になります。 後半の ・ヒルベルト空間は 線形代数学(内積・射影)とつながり、関数解析・ フーリエ解析・確率論 への土台になります。
準備ができたら 第1章:なぜ積分を作り直すのか へ。