第4章 定数係数線形微分方程式
線形なら、代数方程式に化ける
前章までの一般論は強力ですが、具体的に解を書けるわけではありません。ところが線形という条件を課すと、 状況が一変します。とくに係数が定数の線形方程式——ばね振動 、RLC 回路、減衰振動——は、 微分方程式が代数方程式(特性方程式)に化けて、解が指数関数と三角関数で完全に書けます。
秘密は「 を微分しても の定数倍」という指数関数の性質。 を代入すると、微分が の掛け算に変わり、方程式が の多項式方程式になる。あとは代数学の基本定理で根を求めるだけ。 そして線形方程式のもう一つの宝が、解全体がベクトル空間をなすこと——線形代数がまるごと使えます。 この章で、定数係数線形方程式を系統的に解く技術を確立します。
定数係数線形方程式は、 の代入で特性方程式( の多項式)に化ける。解空間は 次元ベクトル空間。
線形性と解空間
定義 線形微分方程式
を 階線形微分方程式という( で同次、 で非同次)。左辺を作用素 と書くと (線形性)。
定理 解空間は n 次元
同次線形方程式 の解全体は、 次元のベクトル空間をなす。すなわち一次独立な 個の解 (基本解系)があり、一般解は 。
証明
線形性より解の集合は部分空間。 次元であることは、存在と一意性から:初期値 を 解に対応させる写像が線形同型(各初期値にちょうど一つの解、逆に解は初期値で決まる)。ゆえ解空間 。∎
「解を全部知る= 個の独立な解を見つける」。線形代数の基底の考え方(第2章)が、微分方程式の 解の構造をそのまま記述します。あとは、その 個の解を実際に求める方法です。
特性方程式
定数係数の同次方程式に を代入します。
定理 特性方程式
定数係数同次方程式 に を代入すると、 より (特性方程式)。この根 が解 を与える。
なので、微分の階数 が に対応し、微分方程式が多項式方程式になる。 根の様子(相異なる・重根・複素)に応じて、基本解系が決まります。
定理 根に応じた基本解
特性方程式の根に対し、 個の一次独立な実解を次で得る:
- 相異なる実根 :。
- 重根 :( 個)。
- 複素共役根 :(オイラーの公式で実化)。
証明
(重根の場合。) が特性多項式 の 重根なら、演算子 ()は を因子にもつ。 ()が計算で確かめられる( を 回で消える)。 ゆえ ()は解。複素根はオイラーの公式 の 実部・虚部をとる。∎
微分演算子 を「代数的な量」として扱い、 と因数分解する視点が強力です。 の掛け算が を消す、という代数計算で解が出ます。
例 振動と減衰
- 単振動 :特性方程式 、根 。一般解 (振動)。
- 減衰振動 ():根 。(振幅が指数的に減衰)。
- 重根(臨界減衰) :( 重)。。
物理の振動現象——単振動・減衰・臨界減衰・過減衰——が、特性方程式の根の位置(虚軸上・複素・実重根・実相異)で 完全に分類されます。「根の実部が負なら減衰、虚部があれば振動」——この読み方が定性理論へ繋がります。
オイラーの微分方程式
定数係数でなくても、変数変換で定数係数に帰着する重要な型があります。
注意 オイラー(コーシー–オイラー)方程式
(各項で の冪と微分の階数が一致)は、 を代入すると の代数方程式に化ける (または の変換で定数係数になる)。特性方程式 の根で解が決まる。
つまずきポイント
注意 よくある誤解
- 重根では を足す。 重根なら の 個。 だけでは基本解系が足りない。
- 複素根は実解に直す。 の実部・虚部 。オイラーの公式。
- 解空間は 次元。 一般解は 個の任意定数(=一次独立な 個の解の線形結合)。線形代数の基底そのもの。
- 根の実部が安定性を決める。 実部 なら で減衰、 なら発散。定性理論の芽。
この章のまとめ
- 線形性より同次方程式の解全体は 次元ベクトル空間(存在一意性から)。一般解=一次独立な 個の基本解の線形結合。
- 定数係数なら の代入で特性方程式( の多項式)に化ける。相異なる根は 、 重根は 、複素根は 。
- 振動・減衰・臨界減衰は根の位置で分類される。演算子 の因数分解が解を生む。
次章は、非同次項(外力)がある場合——未定係数法・定数変化法とロンスキアンを扱います。